WBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ)バンタム級トーナメント開幕戦

WBA世界バンタム級王者・井上尚弥vs元WBAスーパー王者・現WBA同級4位ファンカルロス・パヤノ

横浜アリーナ  2018.10.7



なんだ、これは。

世界のボクシング史において、

ここまでの衝撃的な結末があっただろうか。


ヘビー級のような重量級においては、

ワンパンチで試合が終わるということは珍しくない。

しかし、

ここはリミット53.5キロの世界である。


井上尚弥のパンチの破壊力はケタ違いだ。

まともにヒットせずとも、

かすっただけでもぶっ倒してしまう。


パヤノは十分に作戦を練って井上対策をしてきたはずだ。

あのパンチをもらわないために、

まずは井上のスピードを上回ること、

そして踏み込ませないだけの距離をとること、

ここを意識していたはずなのだ。


緊張感が漂うファーストコンタクト、

互いのリードジャブが交錯する。


前回のマクドネルとは違う雰囲気、

変則的なサウスポーを相手に苦戦するのではないか。


ここから数秒後、

信じられない光景が広がっていく。


井上が左ジャブを突き刺した後、

右ストレートがそことは違う角度で放たれた。

パヤノの顎から上へと、

アッパーの軌道を描いた右ストレートがパヤノの顔面をえぐった。


両足で踏ん張っていたはずのパヤノが、

スローモーションのようにゆっくりと後ろに倒れていく。


なんだ?

なにが起こったんだ?

この事態を理解するまでに数秒の時間を要した。


繰り返すが、

パヤノは両足で踏ん張っていたはずだ。

普通であれば踏ん張りがきいてダウンは免れることができる。

ここで、

なぜ倒れてしまうのだ。


試合の終盤、

スタミナも消耗し、ダメージが蓄積された状態であれば理解できる。

しかし、

これは試合の序盤、

井上のファーストパンチがヒットしたにすぎない。


かつて、

バンタム級には一撃で相手を倒すチャンピオンがいた。

山中慎介。

「神の左」と称された左ストレート。

ただ、

これは大きなモーションから繰り出される渾身の左ストレートである。


これと比べて井上のパンチはどうだ?

前回のマクドネル、今回のパヤノ、

いやスーパーフライ級の頃からそうだった。

小さなモーションから繰り出した軽めのフックでさえ、

当たれば相手は一発でのびてしまう。


井上の拳に触れたらもう終わり。


今までに、

スーパーフライ級~バンタム級で、

こんな拳を持つボクサーがいただろうか。



いや、

これはバンタム級の拳を超越している。

2階級上、

フェザー級の王者とも真っ向から打ち合えるんじゃないか。




全盛期のロマゴンだって、

ここまでのインパクトは残していない。


世界のボクシング界を、

一人の日本人が震撼させている。



これは強すぎる。

WBSSでなければ、

誰だって井上との試合は避けるだろう。


WBSSに出場できた井上には運がある。

これはトーナメントだ。

否応なしに、

他団体の王者と拳を交えることができる。


真の世界最強を求める男にとって、

こんなにありがたい話はない。


準決勝、決勝と、

またあっさりと一撃で仕留めてしまうのではないだろうか。

相手が他団体王者だろうが、

無敗の王者だろうが関係ない。

井上の拳がかすっただけで十分。

そこで試合は終わってしまう。


井上は強すぎる。

凄すぎるよ。


勝手に夢を描いてしまうが、

今回のWBSSバンタム級で優勝したら、

次はスーパーバンタム級に上げてほしい。

そして、

井上が階級を上げた年にWBSSスーパーバンタム級トーナメントが開催される流れになって、

そこでも優勝してもらいたい。


今は世界王者が乱立する時代である。

WBAスーパー王者、正規王者、WBC、IBF、WBO、

場合によっては各団体に暫定王者もいるわけだから、

1つの階級に5本以上のベルトがある計算になる。

そこに加えて王者になれば、

強い相手との対戦を避けることも可能となってしまう。


これでは誰が真の世界最強なのかがわからない。

これはつまらないことだよ。


全階級でWBSSをやればいいのだ。

4団体王者がトーナメントで戦えばいい。

本当に強い男同士で戦って、

真の王者を決めればいい。


今はただ、

井上尚弥が世界中の誰もが認める最強王者になる日を心待ちにしている。



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