WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ
王者・河野公平vs挑戦者・亀田興毅
2015・10・16(日本時間17) 米シカゴ・UICパビリオン
この試合をチェックした。
オンタイムで見たのではない。
試合後、興毅が引退を発表したこと。
興毅は勝っても負けてもこの試合を最後にしようと思っていたこと。
2回、河野はローブローにより30秒間の休憩がとれたこと。
しかし、興毅はそのジャッジに疑問を感じていたこと。
その直後、興毅がダウンを喫したこと。
3回、度重なるローブローで2点の減点を受けたこと。
こういった情報を知った上で試合を見た。
この試合、いろんな見方があっただろう。
私の感想を述べさせてもらう。
試合を見ながら感傷的になってしまった。
途中から、冷静に分析することなどできなくなっていた。
興毅は誰と闘っているのだろう。
相手は目の前にいる河野ではない。
どこを見ている。
何を考え、何を感じている。
1回、興毅が打ち合いに応じた。
通常、興毅はアウトボクシングを主としている。
足を使って距離をとる。
一気に間合いを詰めてからパンチを放つ。
背中を丸め、腕全体を使い徹底的に頭部を保護する。
打たれない、打たせない。
興毅はギャンブルをしない。
石橋を叩いて渡るタイプ。
いや、正確には叩いて叩いて叩いて渡るタイプだ。
試合前、相手の研究を熱心にする。
そこから戦術を組み立てる。
世界戦ともなれば、「勝ち」よりも「負けない」を重視する。
「負けない」に徹するいやらしさ。
この戦い方がうまい。
なぜ、興毅は打ち合ったのか?
一部では「河野を甘く見ていたのではないか?」という意見もあるらしい。
河野ならKOできると判断したから打ち合ったのだ、と。
しかし、私はそうは思わない。
仮に興毅がそう思っていたとしても、1回からまともに打ち合う必要なんてない。
1回は様子を見る。
中盤から後半にかけてラッシュをかける。
これだって十分にKOを狙うことができるのだから。
興毅は何度も世界戦のリングに上がってきた。
河野はチャンピオンだ。
まぐれや偶然でチャンピオンになれるわけがない。
まして世界戦のリング。
人生のすべてを賭けて試合に挑んでくる。
今回の試合において興毅が河野を甘く見るようなタイプであったとするならば、3階級制覇、しかもバンタム級で何度も防衛を重ねてくるということなどできるわけがない。
試合直前、興毅の顔に違和感を感じた。
覇気がない。
何が何でも勝ちにいくという執念が感じられない。
いつもの闘志はどこにいった?
何か達観したかのような、
何かを悟ってしまったかのようなオーラがそこにはあった。
2回、問題のシーン。
まずローブローという判定がなされ河野には休憩が与えられた。
しかし、実際にはこのパンチが原因で休んだのではない。
その前に興毅のボディが河野の腹部にクリーンヒットしていたのだ。
それによって河野はダメージを負いダウン寸前の状態に追い込まれる。
何とかこれを避けようと興毅の拳部分を脇腹に抱え、時間稼ぎをしていた。
この試合のジャッジ。
これは厳しいものであったと思う。
そして、個人的にだが判断の基準に違和感を感じた。
9回、河野はホールディングで減点を受けた。
であるならば、なぜ興毅の拳を脇腹に抱えてダウンを免れようとした行為に対して注意をしなかったのか。
明らかに河野はダメージを負っていた。
当然、興毅はそれを感じている。
続けざまにボディへの攻撃をしかけていく。
そこである出来事が起こる。
ボディを喰らいダウンに追い込まれた河野がジャッジを見つめて「ローブロー」だとアピール。
ジャッジはそれを受けて河野に休憩を与えた。
では、これは本当にローブローなのか?
後半、ジャッジから互いに反則の注意を受けた。
河野は興毅が反則行為をしていると何度もジャッジにアピールしている。
2回、ボディへのパンチを喰らった後の河野を見れば、これが正当なパンチであったのか、ローブローであったのかが判断できるのではないだろうか。
河野はまったくアピールしていない。
私が見る限り、興毅は故意にローブローを放っていたのではないと思う。
ローブローかどうかは微妙な部分がある。
パンチが下っ腹に入ってしまうことはよくある話。
これが本当にローブローだったのなら、河野はあんな態勢で休憩をするだろうか。
また、河野の痛がり方に違和感を感じる。
これは普通のボディパンチでのダメージなのでは…。
興毅はこれに疑問を感じていた。
「ローじゃない。普通のダウンじゃないか…」
しかし、その動揺を表には一切出さない。
試合が再開される。
この直後、河野のパンチで興毅が尻もちをつく。
ダウンをとられた。
このパンチはまったく効いていない。
このダウンはタイミングだけの問題で、運が悪かったとしか言いようがない。
3回、ローブローにより興毅が連続で減点を受ける。
これは故意のローブローではない。
2回、河野を30秒休ませたローブローの判定により、興毅に対してのレフェリーの印象が悪くなったのは確か。
これが日本での開催だったらどうだろう。
一時期のように、亀田の試合=TBSが放映するという試合であったのならこの裁定が下っただろうか。
もう1度ローブローの反則をとられれば興毅は失格になる可能性がある。
これが興毅の歯車を完璧に狂わせた。
「もうボディへはパンチが打てないな…」
通常、ボクサーは頭で考えてパンチを放つということをしない。
0コンマ何秒という世界。
考えてからではパンチを当てることができない。
流れの中で自然と身体が動いていく。
考えるよりも先にパンチが出る。
上下、左右、自在に打ち分けていく中で、ボディへのパンチがスムーズに打てなくなったらどうなるだろう。
あらゆるコンビネーションがすべて決壊する。
それ以前に2回から気持ちが途切れてしまっていたのではないか。
すべてが狂った状態で、それを試合中に立て直すことは至難の業だと言える。
興毅は最後まで表には出さなかった。
黙々と打ち合いに応じた。
興毅が得意とするディフェンシブな闘いではない。
まともに勝負している。
勝ちたいという執念がない。
4階級制覇への憧れもない。
ボクシングという職業に別れを告げるために。
後片づけをして、ここから引っ越していくために。
何を見つめているのだろう。
きっと、そこには安堵の気持ちしかなかったのではないだろうか。
終わることに寂しさはない。
「やっと終われるんだ。」
もう闘わなくていい。
もう無理しなくていい。
強がることもない。
ヒールを演じることもない。
1人の人間に戻れる。
1人の夫として、1人の父親として、
普通に生きていこう。
憑き物がとれたかのように、
長年身に纏い続けてきた闘争心が抜け落ちていったかのように…。
ガムシャラに打ち合った。
顔を腫らせて、それでも前に出続けた。
大差の判定負け。
興毅は弱かったと言う人がいた。
でも、それは違うと思う。
ここまでの点差の開きほど両者の力に差はなかった。
気持ちが折れた中で、ローブローに縛られるという不自由な中で、
5分5分に河野と打ち合った興毅はすごい。
判定を素直に受け止める。
あの2回がなければ…、
4階級制覇を成し遂げて引退ができたのに。
勝利の神様は興毅に微笑まなかった。
これも運命だ。
日本ボクシング界において、興毅はいろんな意味で名を残すことになるだろう。
亀田興毅というボクサーを決して忘れない。
お疲れさまでしたと言いたい。
そして、ありがとうと。
最後の試合、よくやった。
本当によくやった。
素晴らしかった。
あなたの試合をみて勇気づけられた。
最後にもう1度言いたい。
本当にありがとう。
王者・河野公平vs挑戦者・亀田興毅
2015・10・16(日本時間17) 米シカゴ・UICパビリオン
この試合をチェックした。
オンタイムで見たのではない。
試合後、興毅が引退を発表したこと。
興毅は勝っても負けてもこの試合を最後にしようと思っていたこと。
2回、河野はローブローにより30秒間の休憩がとれたこと。
しかし、興毅はそのジャッジに疑問を感じていたこと。
その直後、興毅がダウンを喫したこと。
3回、度重なるローブローで2点の減点を受けたこと。
こういった情報を知った上で試合を見た。
この試合、いろんな見方があっただろう。
私の感想を述べさせてもらう。
試合を見ながら感傷的になってしまった。
途中から、冷静に分析することなどできなくなっていた。
興毅は誰と闘っているのだろう。
相手は目の前にいる河野ではない。
どこを見ている。
何を考え、何を感じている。
1回、興毅が打ち合いに応じた。
通常、興毅はアウトボクシングを主としている。
足を使って距離をとる。
一気に間合いを詰めてからパンチを放つ。
背中を丸め、腕全体を使い徹底的に頭部を保護する。
打たれない、打たせない。
興毅はギャンブルをしない。
石橋を叩いて渡るタイプ。
いや、正確には叩いて叩いて叩いて渡るタイプだ。
試合前、相手の研究を熱心にする。
そこから戦術を組み立てる。
世界戦ともなれば、「勝ち」よりも「負けない」を重視する。
「負けない」に徹するいやらしさ。
この戦い方がうまい。
なぜ、興毅は打ち合ったのか?
一部では「河野を甘く見ていたのではないか?」という意見もあるらしい。
河野ならKOできると判断したから打ち合ったのだ、と。
しかし、私はそうは思わない。
仮に興毅がそう思っていたとしても、1回からまともに打ち合う必要なんてない。
1回は様子を見る。
中盤から後半にかけてラッシュをかける。
これだって十分にKOを狙うことができるのだから。
興毅は何度も世界戦のリングに上がってきた。
河野はチャンピオンだ。
まぐれや偶然でチャンピオンになれるわけがない。
まして世界戦のリング。
人生のすべてを賭けて試合に挑んでくる。
今回の試合において興毅が河野を甘く見るようなタイプであったとするならば、3階級制覇、しかもバンタム級で何度も防衛を重ねてくるということなどできるわけがない。
試合直前、興毅の顔に違和感を感じた。
覇気がない。
何が何でも勝ちにいくという執念が感じられない。
いつもの闘志はどこにいった?
何か達観したかのような、
何かを悟ってしまったかのようなオーラがそこにはあった。
2回、問題のシーン。
まずローブローという判定がなされ河野には休憩が与えられた。
しかし、実際にはこのパンチが原因で休んだのではない。
その前に興毅のボディが河野の腹部にクリーンヒットしていたのだ。
それによって河野はダメージを負いダウン寸前の状態に追い込まれる。
何とかこれを避けようと興毅の拳部分を脇腹に抱え、時間稼ぎをしていた。
この試合のジャッジ。
これは厳しいものであったと思う。
そして、個人的にだが判断の基準に違和感を感じた。
9回、河野はホールディングで減点を受けた。
であるならば、なぜ興毅の拳を脇腹に抱えてダウンを免れようとした行為に対して注意をしなかったのか。
明らかに河野はダメージを負っていた。
当然、興毅はそれを感じている。
続けざまにボディへの攻撃をしかけていく。
そこである出来事が起こる。
ボディを喰らいダウンに追い込まれた河野がジャッジを見つめて「ローブロー」だとアピール。
ジャッジはそれを受けて河野に休憩を与えた。
では、これは本当にローブローなのか?
後半、ジャッジから互いに反則の注意を受けた。
河野は興毅が反則行為をしていると何度もジャッジにアピールしている。
2回、ボディへのパンチを喰らった後の河野を見れば、これが正当なパンチであったのか、ローブローであったのかが判断できるのではないだろうか。
河野はまったくアピールしていない。
私が見る限り、興毅は故意にローブローを放っていたのではないと思う。
ローブローかどうかは微妙な部分がある。
パンチが下っ腹に入ってしまうことはよくある話。
これが本当にローブローだったのなら、河野はあんな態勢で休憩をするだろうか。
また、河野の痛がり方に違和感を感じる。
これは普通のボディパンチでのダメージなのでは…。
興毅はこれに疑問を感じていた。
「ローじゃない。普通のダウンじゃないか…」
しかし、その動揺を表には一切出さない。
試合が再開される。
この直後、河野のパンチで興毅が尻もちをつく。
ダウンをとられた。
このパンチはまったく効いていない。
このダウンはタイミングだけの問題で、運が悪かったとしか言いようがない。
3回、ローブローにより興毅が連続で減点を受ける。
これは故意のローブローではない。
2回、河野を30秒休ませたローブローの判定により、興毅に対してのレフェリーの印象が悪くなったのは確か。
これが日本での開催だったらどうだろう。
一時期のように、亀田の試合=TBSが放映するという試合であったのならこの裁定が下っただろうか。
もう1度ローブローの反則をとられれば興毅は失格になる可能性がある。
これが興毅の歯車を完璧に狂わせた。
「もうボディへはパンチが打てないな…」
通常、ボクサーは頭で考えてパンチを放つということをしない。
0コンマ何秒という世界。
考えてからではパンチを当てることができない。
流れの中で自然と身体が動いていく。
考えるよりも先にパンチが出る。
上下、左右、自在に打ち分けていく中で、ボディへのパンチがスムーズに打てなくなったらどうなるだろう。
あらゆるコンビネーションがすべて決壊する。
それ以前に2回から気持ちが途切れてしまっていたのではないか。
すべてが狂った状態で、それを試合中に立て直すことは至難の業だと言える。
興毅は最後まで表には出さなかった。
黙々と打ち合いに応じた。
興毅が得意とするディフェンシブな闘いではない。
まともに勝負している。
勝ちたいという執念がない。
4階級制覇への憧れもない。
ボクシングという職業に別れを告げるために。
後片づけをして、ここから引っ越していくために。
何を見つめているのだろう。
きっと、そこには安堵の気持ちしかなかったのではないだろうか。
終わることに寂しさはない。
「やっと終われるんだ。」
もう闘わなくていい。
もう無理しなくていい。
強がることもない。
ヒールを演じることもない。
1人の人間に戻れる。
1人の夫として、1人の父親として、
普通に生きていこう。
憑き物がとれたかのように、
長年身に纏い続けてきた闘争心が抜け落ちていったかのように…。
ガムシャラに打ち合った。
顔を腫らせて、それでも前に出続けた。
大差の判定負け。
興毅は弱かったと言う人がいた。
でも、それは違うと思う。
ここまでの点差の開きほど両者の力に差はなかった。
気持ちが折れた中で、ローブローに縛られるという不自由な中で、
5分5分に河野と打ち合った興毅はすごい。
判定を素直に受け止める。
あの2回がなければ…、
4階級制覇を成し遂げて引退ができたのに。
勝利の神様は興毅に微笑まなかった。
これも運命だ。
日本ボクシング界において、興毅はいろんな意味で名を残すことになるだろう。
亀田興毅というボクサーを決して忘れない。
お疲れさまでしたと言いたい。
そして、ありがとうと。
最後の試合、よくやった。
本当によくやった。
素晴らしかった。
あなたの試合をみて勇気づけられた。
最後にもう1度言いたい。
本当にありがとう。
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