IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチ
王者・小國以載vs挑戦者・岩佐亮佑
2017.9.13 エディオンアリーナ大阪
試合後、小國は引退を発表した。
「完敗。やっぱり強かった。(自分は)サウスポーにめっぽう弱い。百発百中でもらっていた。1回から4回に全力でいくという作戦だった。(今後は)引退です。すっきりしてます。最後が岩佐でよかった」
昨年の大晦日、とんでもない光景を目の当たりにした。
22戦22勝全KO。
ありえないレコードをもつ怪物がいた。
この階級、このベルトはジョナサン・グスマンのものであった。
小國は怪物に挑んだ。
目を疑う光景がそこにはあった。
グスマンをボディでダウンさせた。
グスマンに対してまったくビビらない。
ガンガンとインファイトを仕掛けていく。
最終的には当たり前のような顔をしてグスマンを破ったのだ。
「小國、凄すぎる…」
この時のグスマンを破ったことは、日本ボクシング界の歴史に残るような快挙であると思っている。
タイトルを獲ったのは度胸。
そして、この試合を落としたのもやはり度胸であったのではないか。
小國は序盤から勝負をかけるつもりでいた。
それはいい。
しかし、サウスポーの岩佐に対してなぜ右へ右へと入っていくのか。
岩佐の左ストレートは強い。
岩佐は、小國の左ジャブの打ち終わりに合わせて左ストレートを放っていた。
岩佐の強い左がとんでくる。
それでも小國はビビらない。
あくまでも右へ右へと入っていく。
確かに右に入らなければ自分のパンチは当たらない。
グスマンからダウンを奪ったボディを放つためには右へと入る必要がある。
しかし、あまりにも不用意すぎたのではないか。
岩佐の左ストレートを封じるために何かをしたのか?
左ストレートをかわすために何かをしたのか?
岩佐の得意な展開へと、ただ付き合っていってしまったような印象を受ける。
1ラウンド、ダウンを喫する。
2ラウンドは2度のダウン。
もう勝負は見えているのではないか。
しかし、3ラウンドからまたガンガンと前に出る。
グスマンを破った男はやはり象の心臓を持っている。
それはわかるのだが、その勇敢さで前に出ることでしか戦うことができないのだろうか。
良い意味での「臆病さ」がほしい。
岩佐のパンチをもらわないために、どうするべきなのか?
この対策を立てていたらどうなっていただろう。
対サウスポーのセオリー通りに、左に左に入っていったらどうなっていたのだろう。
私はもっと小國の試合が見たかった。
サウスポーが苦手であれば、
もう1試合でも2試合でもいいから、
ボクサータイプの相手との試合が見たかった。
小國には「何かやってくれるのではないか…」という期待感を持ってしまう。
この試合でも同じ。
ダウンを喫しても、それが劇的なドラマを生み出すための前フリではないか…と期待してしまう自分がいた。
小國の敗戦。
小國の引退。
残念でならない。
グスマンに対して堂々と向かっていったあの姿は一生忘れることはないだろう。