田中恒成vsパランポン・CPフレッシュマート~WBO世界ライトフライ級タイトルマッチ エディオンアリーナ大阪

saito

2017年09月14日 10:49

WBO世界ライトフライ級タイトルマッチ

王者・田中恒成vs挑戦者・パランポン・CPフレッシュマート

2017.9.13  エディオンアリーナ大阪



日本ボクシング界屈指の天才は、ライトフライ級における究極のボクサーへと変貌を遂げていた。

完璧なるボクサー。



4団体の王者の中で、ライトフライ級のトップは田中恒成である。

ライトフライ級のタイトルを奪取した試合、

初防衛戦、

ともにそう確信させるほどの圧倒的な内容を見せつけてきた。



今回はWBOランキング13位のパランポンが相手である。

結果はわかっている。

田中が序盤から圧倒するだろう。

そう思っていた。


しかし…。


目を疑った。

1ラウンド、田中がダウンを喫したのである。

パンチをモロに喰らう場面が見られた。

ラウンドを重ねるごとに顔面が腫れていく。

偶然のバッティングにより瞼から流血。

思わぬ苦戦を強いられている。



こういった事態になったのは、「パランポンが意外と強かった」ということに尽きる。

田中としては序盤からガンガンと圧力をかけ、早いランドで仕留めようという作戦だったと思う。

しかし、パランポンの思わぬ反撃にあいダウンを喫した。


2ラウンド、3ラウンドあたりから田中が作戦を変えていく。

本来の器用さを見せ始める。

左ジャブから、左アッパー、左だけでも多彩なるバリエーションのパンチを繰り出す。

序盤には見せなかった変幻自在のフットワーク。


パランポンは「でんでん太鼓」である。

軸がぶれずに、その軸を中心としてコンパクトなフック、ストレートを素早い回転によって繰り出している。

パランポンのパンチの出し方を見て私は感心していた。


では、パランポンを攻略するためにはどうすればいいのか?

でんでん太鼓はターゲットが定まり、それに向かって軸が定まった時に威力を発揮する。

となればターゲットを定めさせなければいい。


序盤、田中は仕留めるためにと至近距離、しかも同じポジションに立ち続けていた。

だからパランポンのパンチを浴びることになった。


田中に必要だったのは左右の動きである。

同じ位置に固定せず、左右にステップワークで身体を動かす。

こうなればパランポンは的を絞れなくなりパンチを出すことさえ難しくなってしまう。


田中は中盤に差しかかるあたりでこれに気づいた。

縦の動きよりも横の動き。

横の動きの中で繰り出す多彩なるパンチの打ち分け。


田中が試合の流れを自分のもとへと引き寄せていく。


8ラウンド、田中は手をとめ、パランポンの攻撃をフットワークでかわし続けた。

パランポンの攻撃のパターン、パンチの軌道、これらをしっかりと読むことができたようだ。


9ラウンド、衝撃が走る。

パランポンが倒れた。

立ち上がった時には、すでに身体に力が入っていない。

田中が一気に出る。

多彩なコンビネーションでラッシュ。

レフェリーが試合をとめた。


9ラウンド、TKOでの勝利。



田中が予想外に苦戦した。

緊迫した試合内容。

エンターテイメントとして見る分にはおもしろい試合であったように思う。


リングサイドにはWBA王者・田口がいた。

田中としては、田口にプレッシャーをかけるためにも「圧勝」して防衛したかったことだろう。



世界王者が乱立するボクシング界。

ただの王者でいたのでは評価されない。

誰とやるのか、どういう試合をするのか。

内容が問われるのだ。



日本人対決。

TBSの中継では過去に行われた3試合の映像が流れた。

薬師寺vs辰吉、畑山vs坂本、井岡vs八重樫、

どれも壮絶なる打ち合いであった。

人々の記憶に残り続ける名勝負であったと言えるだろう。



井岡vs八重樫に続く、日本人同士による団体統一戦の実現はなるのか。



試合後、田中は頭痛を訴え、大事をとって病院に向かったそうだ。

国内最短記録で世界王者、2階級制覇、天才が味わった思わぬ苦戦。

喫したダウン、腫れ上がった瞼、そして流血。

この悔しさが、天才をさらに覚醒させていくことになるだろう。


田中vs田口、ぜひ実現させてほしい。

楽しみである。


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