モンスター・井上尚弥、パレナス戦までの真実。~右拳の負傷を乗り越えてつかんだ圧倒的なKO劇

saito

2015年12月31日 03:56

モンスター、井上尚弥。


WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ、

同級1位・最強の挑戦者であるワルリト・パレナスを圧巻の2ラウンドTKOで圧倒した。


1年ぶりの試合。

ここには隠された真実があった。


昨年、世界的ビッグネーム・オマール・ナルバエスをぶった切っての世界タイトル奪取。

戦慄が走った。

あまりにもセンセーショナルな王者の交代劇。


ナルバエス目がけて振り抜いた右ストレート。

まるでハンマーで殴りつけられたかのような衝撃にナルバエスは吹っ飛ばされた。

しかし、そのエネルギーを伝える役目を果たした井上の右拳も同時に破壊されていたのだ。


1ラウンド、右手人さし指の根元付近にある中指骨の関節を脱臼。

それを隠したまま試合を続行。

結果は2ラウンドTKO勝ち。

勝利の喜びとは裏腹に、感覚の戻らない右手が気がかりだった。


結果は重症。

手術をしなければ完治を望めない。


世界のナルバエスを圧倒したのだ。

間違いなく世界のボクシング界にに自身の存在をアピールできた。

ここでブランクは作りたくない。


防衛戦の予定は5月。

右拳を使わずに試合をしよう。

本気でそう思っていたのだが…。


同じ個所を負傷したことのある現役王者・内山高志に相談。

まだ先は長い。

完全に治すことを優先した方が良い。


3月。

手術を行った。


8ヶ月、右は使えない。

絶望を感じた。

せっかくつかんだスーパーフライ級のタイトル。


このまま試合ができなくなってしまうのではないか。

他の日本人世界王者たちの活躍を見ながら焦りの感情が芽生える。

世間の中から、自分の存在が忘れ去られていくのではないか。

恐怖を感じずにはいられなかった。


11月、右拳を解禁。

やっとベストの状態で練習を再開することができた。


1年ぶりの試合。

ナルバエス戦と同じ、圧倒的な強さを見せつける必要があった。

再び世界の目を自分に向けさせるために。


試合後、井上はこうコメントした。

「去年に続いてパーフェクトな内容。さらに力強くなれるよう練習したい」

まさにパーフェクトだった。

1年のブランクを忘れさせるほどのインパクトがそこにはあった。


今回は無傷で試合を終えることができた。

ダメージはない。

元日から身体を動かし始める予定だ。


次の防衛戦は春。

おそらく4月ごろになるだろう。


試合会場は国内、ナルバエスとの再戦が有力になるとのこと。

ナルバエスとの再戦となれば再び世界の注目は集まる。

これをステップにして、その次はラスベガスへの道を模索することになる。


1年間、遠回りをした。

しかし、この月日は無駄ではなかった。

さらに進化するために必要な時間だったのだ。


右が使えないのなら左を鍛えればいい。

ここから徹底して左を磨いてきた。


左が磨かれたことにより、コンビネーションは更なる進化を遂げた。

パレナス戦でも、その成果を随所に見ることができた。


左ジャブだけでも強烈な破壊力を秘めている。

左が効くから、そこからのコンビネーションがスムーズに打てる。


右はやみくもには打っていない。

きちんと拳を当てる場所を意識しながら打っていた。

最強の挑戦者を相手に、ここまでの余裕があったのだ。


井上は今、誰とやっても勝てる気がしていると思う。

それだけの勢いがある。

いつまで、この状態をキープできるかはわからない。

だからこそ、一刻も早くアメリカでのビッグマッチを実現させてほしい。


井上尚弥。

日本ボクシング界の至宝と呼べる男だ。


まだまだ強くなる。

これからも快進撃を続けていってほしい。


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